アブストラクト(33巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 超低体温下3時間の完全循環遮断に関する実験的研究
Subtitle : 原著
Authors : 羽根田潔
Authors(kana) :
Organization : 東北大学医学部胸部外科, Department of Surgery, University of Washington
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 33
Number : 8
Page : 1200-1206
Year/Month : 1985 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 許容循環遮断時間を延長する目的で, 超低体温下3時間の完全循環遮断後蘇生させる実験を, 19頭の雑種成犬(平均体重15.6kg)を用いて行った. 低体温の方法は, 表面冷却加温法と中心冷却加温法との併用法で, 食道温0~5.6℃までの冷却を行った. 初期の12頭(第I群)はすべて, 復温後12時間以上生存したが, 9頭を中枢神経障害, 出血傾向, 呼吸不全, 全身性浮腫を伴う体液バランス異常などで失った. これらの結果をもとに, 残りの7頭(第II群)では以下のような実験方法の改良を行った. 第I群における脳障害の発生例は, 0℃までの冷却例, 遮断中の著明な体温上昇例(遮断中の平均食道温6.1℃)であることから, 第II群では3℃付近で冷却を止め, 遮断中の体温を5℃以下に保つため, 全身の均等な冷却に留意した. 出血傾向は, フィブリノーゲンと第VIII因子の減少を特微とする一次性線維素溶解亢進症であり, 循環遮断中に体外循環回路内の血液を, 新鮮血主体の新充てん液と交換した. 呼吸不全に対しては, 中心冷却開始し肺の有効血流が減少した後は, 10~12cmH2Oの気道内圧による肺加圧を行い, 加温時有効心拍動が得られた後, positive end-expiratory pressureを加えた調節呼吸とし, 肺のinflationに努めた. 体液バランス異常対策としては, 全経過を通じて血漿の膠質滲透圧を適正なレベルに保った. その結果, 第II群では1頭を術後の痙攣発作のため16時間目に屠殺し, 1頭を4日目に腸重積で失ったものの, 5頭の長期生存犬を得た. これら7頭の脳の病理検索では, 眼球の局所的な寒冷障害によると思われる視覚路障害が5頭にみられたが, 脳の虚血性変化はみられなかった. 以上より, 5℃以下に体温を保てば, 生体は3時間の完全循環遮断に耐えうるものと結論された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 超低体温法, 完全循環遮断, 中枢神経障害, 血液凝固障害, 膠質滲透圧
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