Authors : |
志田力, 中村和夫, 岡田昌義, 松森正之, 松田昌三, 小沢修一, 太田稔明, 西山範正, 沢田勝寛, 兼平暁夫 |
Abstract : |
Bjork-Shiley C-C弁を用いた人工弁置換100例の経験を述べた. 早期死亡は9例で, 耐術者91例の術後経過観察期間は1ヵ月から45ヵ月, 平均16ヵ月であった. 遠隔期死亡は7例で, 3年目の予測生存率は93.6%と良好であった. また, 血栓塞栓症はMVR例では皆無であり, AVR例の1例のみでみられ, 3年目の予測血栓塞栓症非発生率は98.7%であった. この血栓塞栓症が少なかった理由として, 弁機構の改良のほか, 抗凝血療法の厳格な実施が考えられた. 弁機能検査として, 術中及び術後1ヵ月目に行った安静時及び運動負荷時の機能的弁口面積(FMVA)の測定から, 僧帽弁位では移植された弁輪径とFMVAは比例せず, 必ずしも大きい弁を用いる必要はなく, 心臓の大きさに合った適切なサイズで十分であると考えられた. 一方, 大動脈弁位では左室・大動脈間に弁サイズ21mm, 23mm弁ともに平均15mmHgの圧較差が認められたが, 23mm弁では圧較差のない例があり, しかも心拍出量に比例して圧較差が増加したことからできるだけ大きな弁を移植することが望ましいと考えられた. 観察中に, 人工弁の破損を来した例はなく臨床上問題となる溶血発生例もみられなかった. 現時点では, Bjork-Shiley C-C弁は臨床使用上間題なく, ほぼ満足し得る人工弁と考えるが, 今後なお長期間のfollow-upが必要である. |