Abstract : |
17歳男子工員, 交通事故で全身打撲症を受けて救急病院に入院. 受傷約1時間後の心電図で異常q波をIII, aVFに認めた. 第4病日に心挫傷, 両側血胸を伴う肺損傷並びにショック肺症候群という診断で当科に転送されてきた. 入院時の心電図所見で既に明らかな下壁梗塞像を認め, 呼吸不全と心不全症状を呈していたが, 強力な呼吸循環管理により危機を脱し得た. 第85病日に行った冠状動脈造影所見では右冠状動脈は起始部より約1cmの部位で完全閉塞し, 左冠状動脈から右冠状動脈末梢への逆流が認められた. 運動負荷にて心室性期外収縮の頻発などを見るため, 第100病日にA-Cバイパス法による血行再建術を行った. 術後17日の冠状動脈造影所見上バイパスの開存が確認され, その後は自覚症状もなく復職している. 外傷性冠状動脈閉塞症に対する血行再建術の本邦での報告例はなく, 興味ある症例と思われるので, 文献的考察を加えて報告する. 近年交通事故の発生率増加に伴い, 重篤な外傷に遭遇することが多くなったが, その中でも胸部鈍的外傷はそれ単独ではなく全身打撲の一環として認識されることが多いため, 症状の把握が困難で時として見過ごされることがある. |