アブストラクト(33巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 食道癌術後人工呼吸管理下における肺の病態生理に関する研究 ―換気力学的動態の考察を中心に―
Subtitle : 原著
Authors : 杵渕宗作, 武藤輝一
Authors(kana) :
Organization : 新潟大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 33
Number : 9
Page : 1280-1289
Year/Month : 1985 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 食道癌手術後における人工呼吸管理下の肺の病態生理を, 主として換気力学的な角度より考察するため, 食道癌一期的切除一頸部食道胃管吻合術後, 人工呼吸器(Servo 900B Ventilator)で呼吸管理した13例を対象として, 術前から第3病日までの経時的な肺胸郭コンプライアンスの変動を観察し, 血液ガス所見などの指標とともに他手術症例(腹部手術症例7例, 経胸的食道離断術症例3例)における術後変動と比較検討した. なお, 肺胸郭コンプライアンスについては, 測定手技の安定性を求めるため, 本研究に先だち, 一般外科手術患者84例について術前値を実測した. その結果, 1)肺胸郭コンプライアンスの術前値は年齢と正の相関がみられ, その回帰式は, 男性では肺胸郭コンプライアンス=36.01+0.495×年齢(r=0.645, p<0.01), 女性では36.48+0.210×年齢(r=0.506, p<0.01)であった. 2)食道癌術後非肺合併症例では血液ガス所見で, 術後のPaO2, AaDo2, true shunt rateには術前に比べ有意の変動はみられなかったが, 肺胸郭コンプライアンスは術前値に比し術直後から有意に低下(p<0.001)し, その後も漸減する傾向を認めた. 3)食道癌術後非肺合併症例にみられた術後肺胸郭コンプライアンスの変化は主に肺コンプライアンスの変化によるものと考えられ, 換気力学的にみるとmiliary atelectasisの形成を否定できなかった. 4)食道癌術後非肺合併症例にみられた肺胸郭コンプライアンスの変動から, 一期的食道癌手術における手術侵襲の特性が強く示唆された. 5)食道癌術後肺合併症例では肺胸郭コンプライアンスの低下とともに血液ガス所見に異常値がみられた. 特に, 人工呼吸器からの離脱不能症例では, 本研究の換気条件下(分時換気量10ml/kg×15の調節呼吸)で高炭酸ガス血症が認められた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 食道癌手術, 術後人工呼吸管理, 肺胸郭コンプライアンス
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