アブストラクト(33巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開心術後急性期からみた拍動流体外循環の意義 ―糖及び組織代謝についての検討―
Subtitle : 原著
Authors : 長岡秀郎, 印南隆一, 矢野真, 坂本徹*, 山田崇之**
Authors(kana) :
Organization : 土浦協同病院心臓血管外科, *東京医科歯科大学胸部外科, **独協医科大学越谷病院心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 33
Number : 9
Page : 1321-1328
Year/Month : 1985 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 完全体外循環(T・CPB)60分以上の定常流群13例, 拍動流群18例計31例を対象とした. 両群ともにCPB中から術後急性期にかけて高血糖となり, 拍動流ではインスリン, C-ペプチドの分泌増加がみられ, グルカゴンは増加せず, インスリン・グルカゴン, モル比(I/G比)は著明に増加した. 一方, 定常流では内因性インスリン分泌増加は十分でなく, グルカゴンは軽度増加し, I/G比の増加はみられなかった. 術後1時間のインスリン値は定常流で30±21mcu/mlに対して拍動流では71±34(p<0.05), C-ペプチドは定常流で4.8±1.9ng/ml, 拍動流で8.2±3.0(p<0.01), I/G比は定常流で3.5±2.7, 拍動流で11.0±5.2といずれも拍動流で高値を示した. 血中乳酸値は両群でCPB中増加し, 術後1時間で最高値を示したが, 拍動流でより低値で軽度増加にとどまった. 術後1時間の乳酸は定常流で79.1±34.1mg/dlに対して拍動流で44±26と低値であったが有意差はなかった. しかし定常流で10例中5例で乳酸critical level 80mg/dl以上を示したのに対して拍動流では12例中1例のみであった. CPB終了直後の深部中枢・末梢温度較差(DBT・Diff)は拍動流で低値であり, これが4℃以上例の術後1時間の乳酸(84±28mg/dl)は4℃以下のそれ(49±26)より高く, 80mg/dl以上を示す例が多かった. 以上のごとく拍動流では定常流に比し糖代謝, 組織代謝が良好に維持され術後急性期への好影響が認められた. しかし拍動流でも乳酸高値を示す例が存在し, CPB直後のDBT・Diffが4℃以上例では早急な末梢循環改善策が必要と考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 拍動流体外循環, 糖代謝, 組織代謝, 深部中枢・末梢温度較差
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