Abstract : |
症例は54歳の女性. 発熱, 息切れを主訴として当科に入院した. two-dimensional echoにて三尖弁, 大動脈弁に疣贅を認め, パルスドプラー所見では, 両弁の閉鎖不全が示唆された. 動脈血培養では, α-Streptococcusが検出された. 6週間の抗生物質投与により感染をコントロールした後手術を施行した. 手術時, Kirklin III型の心室中隔欠損を認め, 三尖弁中隔尖と大動脈弁右冠尖に穿孔と疣贅がみられた. 心室中隔欠損を直接閉鎖し, 三尖弁を31mm, 大動脈弁を23mmのBjork-Shiley弁にて二弁置換術を行った. 術後経過は順調である. 三尖弁の心内膜炎に対する外科的治療法としては, 弁全切除術, 弁形成術, 弁置換術などがあるが, その選択と本症例における心室中隔欠損の成因について若干の文献的考察を加えて報告した. 一般に, 右心系の感染性心内膜炎は, 左心系に比して発生頻度が低いとされているが, 左心, 右心の両方に病変の及ぶ例になるとその頻度は更に低い. 今回, 我々は心室中隔欠損を介して大動脈弁, 三尖弁に病変を有する感染性心内膜炎の1例を経験した. 本症例の経過とともに, 若干の文献的考察を加えて報告する. |