Abstract : |
大血管の発生過程の異常により大動脈弓とその主要分枝が食道と気管を取り囲む輪を形成するものを血管輪という. この原因として臨床上比較的頻度が高く重要なものは, 1)重複大動脈弓(double aortic arch), 2)右側大動脈弓に伴う左動脈管(right aortic arch and left ductus arteriosus), 3)左鎖骨下動脈起始異常(aberrant right subclavian artery), の3つである. 我々は, この中で重複大動脈弓による血管輪を6例経験した. 症例は, 重複大動脈弓単独のもの1例, 動脈管を合併したもの1例, ファロー四徴症に合併したもの3例, 完全大血管転移症に合併したもの1例である. 手術方法は, 単独例は左側開胸で左大動脈弓を離断し, 動脈管合併例は一期的に左大動脈弓と動脈管の離断を行った. ファロー四徴症合併例では, 一期的にファロー四徴症根治手術と左大動脈弓の離断を行ったもの1例, 二期的に左Blalock-Taussig shuntと左大動脈弓の離断を行った後に心内修復術を行ったもの1例, 緊急手術でBrockの手術だけ行ったもの1例であった. 完全大血管転位症合併例は右側開胸を行い, 右大動脈弓の離断と右Blalock-Taussig shuntを施行した. 手術成績は日齢23日に緊急手術を行ったファロー四徴症合併例を失った以外は経過順調である. 合併心奇形の手術を同時に行う際にはどちらの大動脈弓を離断するかを含めて正確な術前診断が必要で, 心カテーテル検査は欠くことができない. |