Abstract : |
後天性心疾患に対する体外循環下開心術症例8例を対象とし, 体外循環(以下ECC)中の血行力学的諸値, 血小板数, 血奨β-thromboglobulin(以下β-TG)値, 血漿thromboxane B2(以下, TXB2), 6-keto-prostaglandin F1α(以下, 6-keto-PGF1α濃度を測定し, それぞれの関係を検討した. 1. ECC開始により平均動脈圧は79.7mmHgより50.7mmHgへ低下し, 同時に全末梢血管抵抗は1,715dyn. sec. cm-5より850dyn. sec. cm-5へ低下した. 2. 血小板数はECC開始によりECC前の71%に減少した. 3. 血漿β-TG値はECC開始により62ng/mlより837ng/mlへと増加した. 4. ECC開始によりTXB2濃度は2.16±0.74ng/mlより6.95±1.46ng/mlへ増加し, 6-keto-PGF1α濃度は4.65±0.69ng/mlより9.65±3.22ng/mlへ増加した. 5. 6-keto-PGF1α/TXB2比をECC前とECC中の最大値で求めるとECC前1.86±0.77, ECC中2.16±0.87と増加しており, PGI2産生の方が優位に行われていた. 6. ECC前とプロタミンによるヘパリン中和後の血小板数の比を回復率とし, ECC中のTXB2, 6-keto-PGF1αの最大値の比との相関係数を求めたところ, r=0.721と良好な相関を得た. 以上より, ECCにより血小板はshear stressを受け, 放出反応を起こし, 強力な血管収縮物質であるTXA2が産生されるが, その作用を越えるPGI2が生体で産生されることを明らかにするとともに, ECCにおける血圧のinitial dropには内因性PGI2が大きく関与していることを示し, 内因性PGI2の産生の高い個体ほど血小板数は保護されることが明らかとなった. |