Abstract : |
ダイナミックパッチ型人工心筋(D-PATCH)は, 広範心筋梗塞部切除を行った症例において, 左室パッチとして左室内腔を保つとともに直接左室を補助し, 術直後の心不全を克服する目的で開発された. しかし, 左室をco-pulsationメカニズムにより直接補助した場合に生ずる左室内圧の上昇が, 残存左室心筋にとってどのような影響を与えるかは明らかでない. 雑種成犬10頭を用い, 人工心肺下にD-PATCHを縫着し, 駆動に伴う左室残存心筋への影響を右心バイパスモデルで検討した. 左室前壁短軸方向2ヵ所に植えたsonocrystalを用いたsonomicrometryによる左室残存心筋のsegmental shorteningはD-PATCH駆動とともに著しく増強した. end diastolic chord lengthには有意な変化は示さなかったが, end systolic chord lengthは4%の低下(p<0.05)を示し, 収縮率はD-PATCH駆動により139%と著明に上昇(p<0.02)した. 左室残存心筋100g当たりの酸素消費量ではD-PATCH駆動により6.5±2.8ml/min/100gから5.1±2.6ml/min/100gと22%の低下(p<0.05)をみた. 以上より, D-PATCH駆動に伴い左室内圧は5%程度上昇するもののglobalな残存心筋の酸素必要量はD-PATCH補助により低下し, また局所残存心筋の収縮率は増大し, 強力な機械的左室補助効果がみられた. すなわち結論として, D-PATCHは急性心筋梗塞症例に代表される虚血心筋にとっても, その酸素需要を高めることなく強力な左室補助効果を有するものと考えられた. |