Abstract : |
1980年5月から1984年4月までの間にSt. Jude Medical valve prosthesis(SJM弁)を用い僧帽弁置換術(MVR)を施行した181例の臨床成績を検討した. 年齢は8歳から69歳でありMVRのみを施行した症例は64例で, 他はMVR以外の附加手術を必要とした. 早期死亡は13例, 晩期死亡は2例で, 術後抗凝固療法を全例に施行し, 術後の血栓形成例はなく, prosthetic valve endocarditisもみられていない. しかし, 早期死亡の2例, 晩期死亡の2例に強い溶血を認め, このうちparavalvular leakは1例のみであったが, これらは重症例であり溶血に関しては種々の要因が考えられた. 更に生存例の術後のfollow up時の検査では血清LDHの軽度の上昇をみるのみで, 臨床的に問題となる溶血はなく, SJM弁自体が主要因となるものとは考え難かった. MVR施行後, 肺動脈圧, 左房圧の有意の低下を認め各弁サイズとも良好な圧の改善をみた. 術後最長生存例は既に4年を経過し, 術後6ヵ月以上経た131例のfollow upでは89.3%のNYHAによる症状の改善を認めた. SJM弁は他の人工弁に比し, 血栓形成傾向が少ないとされているが, 術後の抗凝固療法は適確に行われるべきと思われ, 弁のdurabilityに関しては更に長期のfollow upが必要であるが, 現在までに弁不全の発生はなく, 現時点では特殊症例を除きmitral postitionにおける第一選択弁として使用可能であると考えられた. |