Abstract : |
症例は49歳の男性, 僧帽弁狭窄症+大動脈弁閉鎖不全症+三尖弁閉鎖不全症を示すリューマチ性連合弁膜症である. 胸部X線にて左房壁の約3/4周に及ぶ石灰沈着が認められた. 手術時, 左房壁の高度石灰化によりメスが入らなかったため, リューエルを用いて一部を切除した切開を行った. そして, 心房壁と石灰沈着部の間に適切な剥離面を得て, 血栓内膜摘除の要領で一塊にして左房の鋳型様の石灰沈着部を切除した. 僧帽弁は29mm Bjork-Shiley弁による弁置換, 大動脈弁, 三尖弁には弁形成術を行い良好な結果を得た. 左房の石灰化を示す症例に対する手術に際しては, 塞栓症の予防および左房壁からの出血を防ぐためにできるだけ一塊にして完全に石灰沈着部を切除することが重要である. 左心房壁の石灰沈着は, リューマチ性僧帽弁膜症の合併症としては比較的まれである. 手術に際して石灰沈着部の切除は出血, 塞栓症などを起こることがあり必ずしも容易に処理できるものではない. 今回, 左房壁のほぼ全周にわたり高度の石灰沈着を有する連合弁膜症の1例を経験し良好な結果を得たので, 若干の文献的考察を加えて報告する. |