Abstract : |
動脈管開存症(PDA)は先天性心臓疾患のなかでも頻度が高く, もっとも安全に手術が行える疾患の一つと考えられている. しかし, 術後に再疎通や仮性動脈瘤の形成がまれにではあるが発生し, とくにPDA術後仮性動脈瘤は放置すると肺, 気管, 食道等へ破裂し予後は極めて不良である. 著者らは17歳男でPDA結紮術後11年目に血痰を認めるようになり, 仮性動脈瘤の肺内破裂を疑い待機手術の予定であったが, 術前に短時間内に1,500mlの大量喀血をきたし出血性ショックおよび呼吸不全に陥った症例を経験した. 直ちに緊急手術で大腿動静脈部分体外循環下に動脈瘤切除と左上葉切除を同時に行い救命し得た. PDA術後仮性動脈瘤の大量喀血例の手術成功例は本邦では初めてと思われるので若干の文献的考察を加えて報告した. 動脈管開存症(以下PDAと記す)は先天性心臓疾患のうち比較的頻度が高く, 手術成績も良好である. PDAに対する手術は, 簡便な結紮法のみと切離術の2つに大別されるが, そのいずれにおいても術後まれに合併症がみられ, 特に再疎通と仮性動脈瘤形成は最も重要な合併症であるとされている. |