Abstract : |
小児期から高度チアノーゼを有し, 3回の短絡術にて延命し得た21歳女性の孤立性右室低形成症例に対し, 心房中隔欠損口(ASD)をパッチにて閉鎖し, 良好な結果を得た. 解剖学的には一次口及び二次口欠損による大きなASD, 三尖弁弁輪の偏位及び右室心尖部の狭小化と末梢肺動脈低形成を特徴としていた. 術後心カテーテル所見では右房圧の上昇及び三尖弁拡張期圧較差を認めており, 術後遠隔期における再検査を含めた管理が必要と思われるが, 現在術後1年を経過し, 著明な臨床症状の改善を認め, 元気に日常生活を送っている. 先天性心疾患のうち右室低形成は三尖弁閉鎖症(TA), 心室中隔欠損を伴う肺動脈弁閉鎖症などに合併してみられるが, これらの合併心内奇形を伴わない右室低形成は心房中隔欠損(ASD)を伴い, チアノーゼ性心疾患の1つとして認められ, 孤立性右室低形成と診断されているが, その報告は少ない1). 今回, 我々は, 当科で2歳頃から高度チアノーゼ性心疾患として経過観察し, その間3回の姑息的手術後, 21歳時ASD一次口及び二次口欠損に対するパッチ閉鎖にて根治し得た孤立性右室低形成の症例を経験したので本症例の幼児期からの診断と外科治療の経緯について述べ, 本症に対する手術適応と外科療法及び類似疾患との鑑判診断についても若干の考察を加えて報告する. |