アブストラクト(34巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 内壁動脈-冠動脈バイパス手術:連続45例の経験
Subtitle :
Authors : 北村惣一郎, 大山朝賢, 河内寛治, 飯岡壮吾, 高義昭, 森田隆一, 金烱澤, 西井勤, 居出弘一*
Authors(kana) :
Organization : 奈良県立医科大学第3外科, *奈良県立医科大学放射線科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 34
Number : 1
Page : 14-22
Year/Month : 1986 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 過去1年6ヵ月間に45例の内胸動脈グラフト(IMAG)使用の冠動脈バイパス手術(CABG)を行った. 年齢は6~65歳の男性39例, 女性6例で2例は川崎病, 43例(平均年齢50±7歳)は動脈硬化性病変であった. 対象の42%は30~40歳台, 53%は50歳台と若年者層に主として用いた. 40%に高脂血症を, 20%に糖尿病を合併, 2例に下肢静脈瘤の合併をみた. バイパス数は1本8例, 2本19例, 3本16例, 4本2例でIMAGはLADに39例, DX(対角枝)に6例用いた. 他枝へのバイパスにはSVGを用い, 平均2.3本/患者であった. 同時合併手術を6例に加えた. 吻合は8-0モノフィラメント糸による連続縫合で行った. 1例が急性膵炎, 腎不全で術後2ヵ月目に病院死(2%)したが, 44例は生存, 術後改善をみた. 43例(98%)で狭心症は消失し, 96%で負荷心電図は全く陰性化し高率に臨床所見の改善を認めた. 術中測定したIMAG流量は47±30ml/分でLADに対するSVGの80±34ml/分に比し有意に低値(p<0.01)を示したが, 術後流量不足を思わせる臨床所見はみられなかった. 理由として術後IMAG流量の増加(拡張), 本来の冠動脈流との協調などが考えられた. 術後1ヵ月から8ヵ月目に29例の術後検査を施行し, IMAGの開存率は100%であった. 高率にA. pericardiacophrenica が切離されず残存していたが, steal現象を生じている所見はなかった. 造影上90~100%の狭窄, 閉塞を示す冠動脈の場合IMAGは太くなりLADのみならず左冠系全体をも灌流し得る所見がみられた. 一方, 50~75%狭窄病変の場合はIMAGは細くなっている所見がみられたが, その運命については今後の検討を要する. 本来の冠動脈の術後病変の進行(閉塞化)はIMAGで28%と少なく, SVGで63%と高率であった(p<0.05). 本グラフトのもう一つの利点は成長の可能性を有していることであり, これは川崎病などの小児期CABGには有利と考えられる. 本邦人におけるIMAGの遠隔期の有用性の実証にはSVGとの長期の比較が必要で今後の検討を要するが, 若年者や高脂血症患者では明確となる可能性が高いと考える. IMAGは有用なグラフト材であり我が国でも普及されるべきものと信ずる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : A-Cバイパス手術, 内胸動脈グラフト, グラフト動脈硬化, 高脂血症, グラフト開存率
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