アブストラクト(34巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 上室性不整脈に対する右心房局所冷却治療法の実験的研究
Subtitle :
Authors : 東舘雅文, 今井康晴
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学付属日本心臓血圧研究所循環器小児外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 34
Number : 1
Page : 40-47
Year/Month : 1986 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 上室性不整脈を心機能を低下させずに治療するのは困難なことが多い. 特に開心術後に発生するものは, 心機能低下を起こすおそれのある抗不整脈剤などは使用しにくく治療が難しい. また, 開心術後にしばしば使用されるcatecholamineなどによる頻脈もその薬剤の使用を中止することが必ずしもできず治療が難しい. それらに対する新しい治療法の実験研究を行った. 実験は雑種成犬を用い新しく製作した右心房局所冷却装置を右心室や左心室には接しないで右心房心外膜にのみ接するように心膜との間に設置し, 冷却水を循環させる2本の管を肋間より体外へ出して閉胸し実験終了後に抜去できるようにした. この右心房冷却法を用いると, 右心房以外の右心室や左心室などの心臓部分や全身温を変化させずに右心房壁温を低下させ, 動脈圧や心拍出量などの血行動態を変えずに右房壁温36.0℃の平均心拍数146.3/分を右房壁温28. 0℃の109. 7/分へと減少させることができた. この右心房壁温低下による心拍数減少変化を心電図上でみると, R-R間隔が延長したのは主にT-P間隔が延びたものでP-R間隔やQRS間隔は全く変化せずQ-T間隔も約13%延びただけであった. これは, 右心房局所冷却により心房pacemaker細胞の脱分極頻度は減少するが, 他の刺激伝導時間には影響がなかったものと考えられた. 次に, isoproterenol誘発心房性頻脈は右房壁温36.0℃の平均178/分の心拍数が, 同法により血行動態をかえずに右房壁温28.0℃で平均124/分まで減少させえた. また, aconitine右房壁塗布による心房性不整脈も同法により, 再現性をもって全例消失させえた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 右心房局所冷却, 上室性不整脈, アコニチン, イソプロテレノール, 術後不整脈
このページの一番上へ