アブストラクト(34巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : ハンコック弁置換患者の術後2-9年間における遠隔成績の検討
Subtitle :
Authors : 川内義人, 吉利用和, 富永隆治, 戸嶋良博, 古森正隆, 田中二郎, 徳永皓一
Authors(kana) :
Organization : 九州大学医学部心臓外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 34
Number : 1
Page : 48-56
Year/Month : 1986 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1975年2月から1981年10月まで, 219例に255個のHancock(H)弁を使用し, AVR 41例, MVR 121例, 多弁置換(CVR)47例, TVR6例及びPVR4例を施行した. 手術時年齢は平均43.2歳(9~67歳)であり, 術後1ヵ月未満の早期死は10例(early mortality rate 4.6%)であった. 追跡期間は平均4.7年(2.5~9.2年), cumulative follow-up 1006 patient・years(P-Ys)であり, 追跡率は99.5%であった. 遠隔死は27例(late mortality rate 2.7%/P-Y)であり, 内訳は, 生体弁に起因するもの8例, その他の心臓死13例, 心臓と直接関係のないもの6例であった. Overall actuarial survival rate(Anderson法)は9年で69%(非心臓死を除くと82%)であった. 血栓塞栓症(TE)の発生率は術後1年以内に頻度が高かった. 弁置換別にみると, MVR群2.0%/P-Y, CVR群5.8%/P-Yであったが, AVR群では182 P-Ysの期間中に, 抗凝血薬療法を行わなかったにもかかわらずTEの発生をみなかった. また, 抗凝血薬療毒中の脳出血死が2例に発生した. Primary tissue failure(PTF)の発生率は0.4%/P-Yで, 弁置換時年齢が若いほど高頻度の傾向を示した. PTF発生は6~7年ごろに増加傾向を示したが, それ以降における加速度的な増加はなく, 9年目のPTF free rateは88%であった. 感染性心内膜炎(PVE)は, 0.9%/P-Yに発生した. PTF, 又はPVEによる生体弁機能不全のため, 術後5.2年(1.4~7.1年)で6例(0.6%/P-Y)の再臨置換術が施行されたが, いずれも待期的手術が可能であり, 全例救命できた. これらの結果から, H弁は種々の代用弁置換, 特に年長成人やAVR症例において, 有用な生体弁であることがわかった. しかし, 9年間の追跡調査でもH弁耐久性については判断できず, 更により長期の慎重な検討が必要であると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : ハンコック弁, actuarial survival, 血栓塞栓症, primary tissue failure, 再弁置換術
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