アブストラクト(34巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 三尖弁閉鎖不全症における弁輪拡大の定量的評価と臨床的意義
Subtitle :
Authors : 八田光弘, 黒沢博身, 福島靖典, 新岡俊治, 藤原直, 小柳仁
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医大心研外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 34
Number : 1
Page : 77-84
Year/Month : 1986 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 二次性三尖弁閉鎖不全症(TR)における弁輪拡大の伸展様式の解明は, TRに対する三尖弁形成術の術前, 術中評価の上で重要な課題である. 今回, 我々はTRを有した剖検心標本16例, 正常心標本13例について, 各弁尖弁輪比の変化に注目し, 検討を加えた. その結果, 1)弁輪拡大においては, 前尖部弁輪(AL):正常群36.4±3.9mm, TR群45.0±9.0mm(p<0.05), 中隔尖部門輪(SL):正常群34.8±3.4mm, TR群36.6±5.4mm, (NS), 後尖部弁輪(PL):正常群26.2±8.5mm, TR群32.9±11.2mm(p<0.05)と前尖部及び後尖部に, それぞれ24.0%, 25.6%の伸展を示し, 不変であるSLを基準とした弁輪比(AL:SL:PL)は正常群1:1:0.75に対し, TR群では, 1.22:1:0.9と明らかな偏位を認めた. 2)TRを有した剖検心16例について, 各弁尖弁輪から弁輪長, 占有率(AL/TL, SL/TL, PL/TL), 中隔尖弁輪長に対する各弁尖弁輪の比(AL/SL, PL/SL)を算出し, PA mean, RVEDVI, RVEDPとの相関について検討したところ, PA meanは, 前尖部占有率に, y=0.57x+21.7(R=0.81, p<0.05)と良い相関を認め, AL/SLでも同様の傾向を示した. 一方, RVEDVIは, 前尖部及び後尖部の弁輪長, 後尖部弁輪占有率(PL/TL)及びPL/SLに良い相関を認めた. RVEDPについては, いずれの相関も示さなかった. 3)左心系の容量変化の三尖弁輪に及ぼす影響について, TR群を, LVEDVIの有意に増加した僧帽弁病変兼大動脈弁病変群(A+M群)と僧帽弁病変群(M群)に分け, 比較検討すると, A+M群では, 後尖部弁輪占有率の有意な伸展を認め, LVEDVIと後尖部弁輪の伸展に良い相関を有した. 以上により, TR合併例での各弁尖弁輪拡大は, それぞれ, 術前RVEDVIの増大及びPA meanの上昇と良く相関するため, TRの術前診断の参考となり, 術中弁輪比の検索と合わせて, 適切な弁形成術を施行する上で有用と考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 三尖弁閉鎖不全症, 弁輪拡大, 右室拡張末期容積指数(RVEDVI), 平均肺動脈圧(PA mean), 三尖弁弁輪比(AL:SL:PL)
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