Abstract : |
当教室で過去3年間に経験した, 先天性心疾患根治術後の肺高血圧クリーゼ(PHC)5例について検討した. 症例はTGA 2例, DORV(Taussig-Bing)1例, 総動脈幹症1例, 偽性総動脈幹症1例であった. 術前の心カテーテル検査では, 4例に肺高血圧を認めた. . 術後, 肺体収縮期圧比(以下Pp/Ps)が, 約1.0となる発作を反復し, 呼吸管理や鎮静剤の投与でも改善しないものをPHCとした. PHC発症時にtolazoline hydrochloride(以下Tz)を0.5~2mg/kg肺動脈内に投与し, 以後1mg/kg/hrで持続投与し, その効果を検討した. Pp/Psは術前平均0.70±0.30, 術後安定期には0.51±0.07と低下したが, PHC時には1.07±0.15と上昇し, Tz投与後は0.53±0.14まで有意に低下した(p<0.05). 心係数は, 術後安定期3.75±0.78L/min/m2からPHC時には3.57±0.52となったが, Tz投与により4.46±1.34へと増加傾向を示した. 肺血管抵抗は, 術後安定期に5.6±1.5U・m2であったが, PHC時には16.3±7.4と上昇し, Tz投与後は5.2±2.9へと低下した. PHCはTz投与後にはみられず, 全例救命し得た. PHCの発生因子としては, pulmonary hypoxic vasoconstrictionが推察された. |