アブストラクト(34巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 大動脈遮断時の脊髄虚血予防に対する脊髄誘発電位(ESP)の応用-特にSEPに対するESPの優位性-
Subtitle :
Authors : 松居喜郎, 郷一知, 奥出潤, 佐久間まこと, 安田慶秀, 田辺達三
Authors(kana) :
Organization : 北海道大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 34
Number : 2
Page : 172-179
Year/Month : 1986 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 大動脈瘤手術後の重篤な合併症である対麻痺を予防するため, 脊髄誘発電位(以下ESP)を用い, 基礎的, 臨床的検討を行った. 1)実験は21頭の成犬を用い, 第1腰椎付近の硬膜外より刺激を加え, 第4~5胸椎間の椎間板に刺入した針電極により前方導出法でESPの記録を行った. 左鎖骨下動脈遮断後, その分岐直下で下行大動脈を遮断したが, 4型のESP変化が得られ, これをType-1A, 1B, 2, 3に分類した. Type-1A(3頭)は, 一過性のESP振幅増大の後, 低下, 消失し, 遮断解除後は回復した. Type-1B(6頭)は, 一過性の振幅増大なしに, 低下, 消失し, 遮断解除後に回復した. Type-2(11頭)は, 遮断中, ESP波形に変化はなかった. Type・3(1頭)は, 遮断中, 一過性の振幅低下の後, 回復に向かった. 以上の実験結果は体性感覚誘発電位(以下SEP)を用いた従来の報告と大きく異なっていた. そのため, 次に, 末梢血圧の影響をみるため, 大動脈遮断時, ESP記録と同時に露出した坐骨神経の2点間で誘発電位を記録したところ, 各型とも, 末梢神経誘発電位は振幅が低下, 消失し, 遮断解除後には回復した. このことは末梢神経を介するSEP法では末梢神経虚血の影響が大きく, 必ずしも脊髄機能を反映し得ないことを示すものである. 2)臨床例9例において術中脊髄虚血モニターとしてESPを測定した. 6例に変化なく, 一時・バイパス血流不良の3例でESP波形の消失をみたが, 血流再開とともにESPは回復し, 全例, 術後対麻痺はさけえた. ESP法は波形導出が簡単で再現性も高く, 胸部大動脈遮断に対する脊髄虚血モニターとして有用である.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 対麻痺, 脊髄誘発電位, 脊髄虚血, 体性感覚誘発電位, 大動脈瘤
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