Abstract : |
Interpulse膜型肺(IPMO)は, 小さな有効膜面積に比して高いガス交換能を有し, 同時に拍動流現象を生ずる新しい膜型肺である. 本肺及びTMO膜型肺, Shiley気泡型肺を成人開心術50例に使用し各種血液成分, 腎機能renin-angiotensin-aldosterone系(RAA系)に及ぼす影響について臨床的に比較検討した. IPMO群の血小板数減少, 血漿遊離ヘモグロビン増加は, 体外循環180分の範囲で, Shiley群に比し有意に軽度で, TMO群とは有意差を認めなかった. またIPMO群の好中球数は, TMO群に比し早期に増加するが, 体外循環180分野は, ほぼTMO群と同程度にとどまりShiley群と有意差を認めた. 一方, リンパ球数は体外循環時間とともに低下したが, その程度は3群間で有意差を認めなかった. 各種血漿蛋白成分は体外循環により減少する傾向を示したが, IgM及び血清補体第3成分(C3)は最も顕著な変動を示した. また, この減少率はShiley群で有意に高度でIPMO群は, ほぼTMO群と同様の傾向を示した. RAA系, 腎機能については, これらの体外循環中の変動に対する各種灌流条件の影響を検討した上でIPMOの拍動流効果を評価した. 体外循環中種々の程度にRAA系亢進とクリアチニンクリアランス(Ccr)低下, sodium excretionの低下が認められたが, 灌流量一定の条件下で, 血中レニン活性値(PRA)増加率, Ccr低下率はtotal bypass時の灌流圧と良好な相関を認めた. すなわちoptimal flow rale(70~80ml/min/kg)の灌流量の場合, 灌流圧70~80mmHgにおいて最もRAA系亢進, Ccr低下が軽度で良好な循環動態を示した. 各群別に灌流圧に対するPRA, Ccrの変動をみると, 灌流圧60~80mmHgの範囲でのPRA上昇率がIPMO群で低い傾向を認めたが, Ccrについては明らかな差を認めなかった. 以上のように, IPMOは血球成分, 血漿蛋白成分変性に対する膜型肺の利点を損うことなく, 平均22.4 ± 6.1mmHgの脈圧を生じ, 180分までの体外循環において安全, 有用な膜壁肺であるが, その拍動流効果は, 臨床的には顕著ではないと考えられた. |