アブストラクト(34巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 気管端々吻合部の形態学的並びに生化学的研究
Subtitle :
Authors : 菊池功次
Authors(kana) :
Organization : 慶応義塾大学医学部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 34
Number : 3
Page : 357-364
Year/Month : 1986 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 気管端々吻合術における治癒過程を検討するために, 実験的に気管の環状切除, 端々吻合を行い吻合部の血管構築, 抗張力, 組織コラーゲン量の変化及び組織学的所見について, 経時的に検索した. 気管吻合部の治癒過程を微細血管構築からみると, 吻合部の新生血管の増生及び吻合線を越える血管の新生は粘膜側及び外膜側ともに7日目にははじまり, 14日目には粘膜及び外膜の全域に認められた. 吻合部の抗張力は7日までは余り増加しないが, 7日以後急速に増加し28日目には吻合線1cm当たり1kgを越えていた. 吻合部組織コラーゲン量の変動についてその特異構成アミノ酸であるハイドロキシプロリンを測定してみると, 3日目には減少し7日目には増加していた. 組織学的検討では, 3日目の吻合部に余りみられなかった膠原線維が7日目には吻合部に増量した. 14日目の吻合部では膠原線維の著しい増加はみられなくなったが, 線維の走行は7日目と比較すると整然となっていた. これらの所見はコラーゲン量の生化学的測定結果と一致していた. また吻合部の膠原線維の増生は粘膜下層や外膜側にもみられたが, 特に軟骨膜に接して膠原線維の増生が著明であった. 以上の結果より, 気管吻合部の治癒は血管構築, 抗張力, 組織コラーゲン量の変化及び組織学的所見から検討してみると, 術後14日前後にほぼ完了すると思われた. また吻合部の癒合に軟骨膜が関与している所見が得られたため, 臨床例において気管端々吻合を行う際血流の温存や断端の正しい接着に留意するだけでなく, 軟骨膜を含めた軟骨の損傷を少なくすることも重要であると思われた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 創傷治癒, 気管形成術, 抗張力, コラーゲン, 血管構築
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