アブストラクト(34巻4号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 僧帽弁狭窄症の血行動態における循環血漿量の意義
Subtitle :
Authors : 道山琴美, 中村和夫
Authors(kana) :
Organization : 神戸大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 34
Number : 4
Page : 440-446
Year/Month : 1986 / 4
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 教室において手術が実施された僧帽弁狭窄症29例について術前後における循環血漿量の変動を明らかにすることにより, 僧帽弁狭窄症の臨床病態を修飾する因子としての循環血漿量の意義を検討した. その結果, 僧帽弁狭窄症例における循環血漿量は, 対照群の41.0cc/kgに比し51.0cc/kgと増加しており, 従来からの報告と同じ結果が得られた. しかし, 僧帽弁狭窄症群について心拍出量と循環血漿量の関係を検討してみると心拍出量が低い症例ほど循環血漿量が減少しており, 特に三尖弁閉鎖不全症合併例でこの傾向が著明であった(r=0.626, p<0.02). また, 心拍出量及び循環血漿量と心内圧との関係をみてみると, 心拍出量が2.2L/min/cm2以下に減少している症例では同程度の僧帽弁狭窄が存在するにもかかわらず, 循環血漿量が45cc/kg以下の群で心内圧は正常値を示す例が多かったのに反し, 循環血漿量が45cc/kg以上に増加している例では心内圧は高値を示す例が多かった. 一方, 心拍出量が2.2L/min/cm2以上と比較的多く保たれている場合には循環血漿量の多寡により心内圧の差は表れなかった. 術後は一般に心拍出量の増加がみられるにもかかわらず, 循環血漿量は余り変化しない例が多く, また術前にみられた心拍出量の減少に応じて循環血漿量も減少するという傾向は消失した. 以上のことから, 僧帽弁狭窄症の臨床症状を規定する因子として循環血漿量は重要な役割を演じていると考えられ, この減少によって肺毛細管圧の上昇を防ぎ肺血管床を温存せんとする機構の存在が示唆された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 僧帽弁狭窄症, 低心拍出量, 循環血漿量, 心内圧, 高齢者
このページの一番上へ