アブストラクト(34巻4号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 右心室の心臓電気生理学的隔離に関する実験的研究
Subtitle :
Authors : 斉藤裕, 岩喬
Authors(kana) :
Organization : 金沢大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 34
Number : 4
Page : 484-495
Year/Month : 1986 / 4
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 不整脈性右室異形成では, 広範な右室脂肪変性に起因する心室性頻拍が多発しやすい. 著者はこのような点から, 本症に対し従来の外科的処置を個々の頻拍起源に対し行うより病変右室全体を電気生理学的に隔離し, 頻拍を右室内に孤立させることが有効と考え, 実験を行った. 成犬20頭を対象に右室ペーシングを行い, 右室起源頻拍モデルとした. 人工心肺装着下に, 以下の4群に分けて隔離手術を試みた. 右室自由壁全層切開のみを行ったI群3頭では, 右室隔離は成立せず, 左室はペーシング調律のままであった. 著者の術式として, 右室自由壁切開に加え, 中隔束が壁束へ翻転移行する部位の室上稜を心内膜側より切開した. これをII群として7頭に施行し, 全例右室隔離に成功した. この結果, 右室ペーシング時に左室は洞調律へと推移した. 更にこの変法として, 右室自由壁切開後の室上稜切開に代え, 同部への-60℃3分間2回の冷凍凝固をII'群4頭に施行した. II'群では全例隔離に成功したが, I°の房室ブロック発生を認めた. III群としてGuiraudonの方法, すなわちII群の操作に加え, 三尖弁輪心内膜側心筋切開と三尖弁前乳頭筋切断を6頭に行った. 3頭で成功したが, 他の3頭では弁輪に沿う心内下側心筋切開過程で右冠動脈損傷を来した. 以上のことから, 冷凍凝固併用も含めた著者の術式は, 確実な右室隔離方法であり, Guiraudonの方法に比べ, 1)手技が容易である, 2)右冠動脈損傷の可能性が少ない, 3)三尖弁機能が温存される点で優れている. 本法の今後の臨床応用が期待される.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 右室隔離, 心室性頻拍, 不整脈性右室異形成
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