アブストラクト(34巻4号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 慢性肺塞栓症に対する外科治療の経験
Subtitle :
Authors : 中島伸之, 川副浩平, 安藤太三, 上村重明, 藤田毅
Authors(kana) :
Organization : 国立循環器病センター心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 34
Number : 4
Page : 524-531
Year/Month : 1986 / 4
Article : 報告
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 肺塞栓症の外科治療は, 本邦においてはとくに確立された分野ではないので, 多くの問題点があることと考える. 我々は現在までに, 5症例に対して, 直達的に肺動脈よりの塞栓除去術を経験したので, これらについての成績を報告する. 全例とも著しい呼吸困難を主訴として入院し, 肺高血圧症及び右心不全状態を呈していた. 確定診断は, 肺血流シンチと選択的肺動脈造影法によったが, 全例多発性の広範囲の閉塞所見が得られて手術適応とした. 手術は2症例においては, 体外循環を使用せず側方開胸下に塞栓除去を試み, 他の3症例では, 胸骨正中切開にて, 体外循環下に塞栓除去を試みた. 深部静脈血栓症の存在を術前には証明し得なかったが, 術前診断は全例において血栓による進行性の塞栓症であった. しかし術後診断は2例が血栓, 2例が腫瘍塞栓, 1例が右心原発の悪性腫瘍という結果を得た. 手術成績は, 病態の進行が高度のため, 腫瘍転移の2例が手術近接死, 心原発腫瘍の1例は右室流出路の再建を再度試みることにより一年の延命を得た. 2例の血栓性塞栓症においては, 第1例目は除去が十分に行い得なかったために臨床症状の改善を余り得られなかったが, 2例目は術後良好なる症状改善を得て社会復期が可能となった. 我々の経験から, 深部静脈血栓症の合併が必ずしも証明されないこと, 腫瘍塞栓の確定診断がつけ難いことなどの問題とともに, 外科手技上にも, 検討されねばならない多くの問題点が見いだされた. 今後の症例の蓄積と経験が望まれる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 慢性肺塞栓症, 外科治療, 血栓性, 腫瘍性
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