Abstract : |
冠動脈完全閉塞末梢部へのA-Cバイパスの適応を決める際に重要な点は, (1)末梢冠動脈のgraftabilityと, (2)生存心筋の有無の判定である. 本論文では冠動脈完全閉塞の末梢領域にA-Cバイパスを行った19例を対象としてこれらの問題の検討を行った. 術前の冠動脈造影所見より末梢冠動脈を, A;内径が1.5mm以上のもの, B;内径が1.5mm以下である吻合可能と思われるもの, C;糸のごとくで吻合困難な可能性のあるもの, D;全く造影されないもの, などの4群に分類し, 下記の諸事項の検討を行い, 下記の成績を得た. graftabilityはA;4/4(100%), B;12/12(100%), C;7/10(70%), D;0/4(0%)で, 手術時の冠動脈の平均内径はA;1.94mm, B;1.59mm, C;1.43mm, 平均グラフト流量は, A;94ml/分, B;50ml/分, C;43ml/分であり, 1~2ヵ月での開存率は, A;4/4(100%), B;11/12(91%), C;7/7(100%)であった. 生存心筋の有無の判定にはタリウム-201運動負荷心筋シンチグラフィーが有用であった. 術後18例において冠動脈造影, 左室造影, 運動負荷心筋シンチグラフィーを行ったところ, 完全閉塞の末梢領域へのバイパス成功例では症状や心筋シンチグラムの改善とともに心機能もよく改善していた. 従って, 運動負荷心筋シンチグラフィーで生存心筋が認められた症例における冠動脈完全閉塞末梢領域へのA-Cバイパスは有効であり, 左前下行枝領域では造影所見上冠動脈が細くても積極的に手術の対象とすべきとの結論を得た. |