アブストラクト(34巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 大動脈弁閉鎖不全あるいは大動脈弁のprolapseを伴う膜様部及び円錐中隔中央部心室中隔欠損症の外科治療
Subtitle :
Authors : 藤原直, 東舘雅文, 黒沢博身, 高梨吉則, 小柳仁*, 橋本明政*, 林久恵*, 今井康晴
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学日本心臓血圧研究所循環器小児外科, *東京女子医科大学日本心臓血圧研究所循環器外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 34
Number : 6
Page : 805-811
Year/Month : 1986 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1973年から1982年までの10年間に手術を行った大動脈弁の閉鎖不全(AR), あるいはprolapseを伴うVSDのうち, subpulmonary VSDを除く31例を対象として本症の病態や外科治療について臨床的検討を行った. 年齢は4~31歳, 平均9.8歳, 25例(81%)がARを伴っていた. 31例をVSDの形態により4つの群に分けた. A群は三尖弁上端部付近にみられた直径3~5mmの小さなVSD, B群は膜様部を中心に心尖部方向に進展したVSD, C群は膜様部を中心に流出路方向に進展したVSD, D群は円錐部中央に存在するVSDに合流した症例である. A群では左右短絡率は23.0%と小さいにもかかわらずARの発生率は78%と高くSellers 2度以上のARの占める割合も44%と高かった. 短絡率の大きいB・C群では中等度の漏斗部狭窄(圧差15~60mmHg, 平均34.5mmHg)が9例にみられ, ARの発生機序との関連が示唆された. D群でprolapseした弁尖はすべて右冠尖で短絡率は平均20.9%と小さく, ARの程度も軽い. prolapseが無冠尖にも及んでいる症例が全体の約40%にみられた. これらの症例に対して年長例の2例で大動脈弁置換術を行い, 17例にplicationを行った. Plicationを行った症例のうち11例に拡張期雑音が術後も残存し, 雑音の強さが軽減した例が10例(消失例を含む), 不変例が4例, 増強例が3例であった. また, 術前拡張期雑音が聴取されていたにもかかわらずVSD閉鎖のみを行った4例では全例術後の拡張期雑音が残存した. これらの結果は大動脈弁に対する外科的処置がある程度病変の進行した時期に行われ, 同じ時期に行ったsubpulmonary VSDに比較しても十分な手術成績が得られていないことを示している. 従って, これらのtypeのVSDに伴うprolapseの発生機序をふまえた早期の外科治療が必要である.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心室中隔欠損症, 大動脈弁閉鎖不全, prolapsing AR, 膜様部VSD, 大動脈弁のplication
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