| Authors ： |
西元寺秀明, 森下靖雄, 東哲秋, 下川新二, 大園博文, 梅林雄介, 帖佐信行, 橋口雅彦, 平明, 後藤正道* |
| Abstract ： |
長時間心保存のため, potassium cardioplegiaと単純冷却浸漬の組み合わせによる保存法の有効性を検討した. 保存心のviabilityの判定には同所性移植を活用し, 併せて血行動態, 心筋水分含有量及び組織学的検査（contraction bandsの出現頻度）を行った. 雑種成犬48頭を用い, 4℃のcardioplegia液で急速心停止を得たのち, 心臓を摘出して同じ組成・液温のcardioplegia液に単純に浸漬した. 一定時間保存後, 同所性に移植し, 移植後急性期の2時間を観察期間とした. 実験を6群に分け, カリウム加乳酸加リンゲル液（K＋=31.5mEq/L）による6時間保存をI群（n=13）, I群液にverapamil 1mg/L添加による6時間保存をII群（n=14）, verapamil 2mg/L添加による24時間保存をIII群（n=3）とした. また, Collins'M液にverapamil 2mg/L添加による24, 36, 48時間保存をそれぞれIV群（n=8）, V群（n=5）, VI群（n=5）とした. 移植成功率はI群63%, II群100%, III群0%, IV群100%, V群80%, VI群0%であった. 移植後の血行動態はIV, V群がI, II群に比して良好であった. 心筋水分含有量は移植前後でI群においてのみ有意に増加した. 移植後のcontraction bandsはII群がI群より軽度であり, IV群はII群よりさらに軽度であった. potassium cardioplegiaと単純冷却浸漬保存を組み合わせた保存法により長時間心保存の可能性が示唆された. また, 保存液として細胞内液組成類似のCollins'M液の優位性及び保存液へのverapamil添加の有用性が示唆された. |
