Authors : |
原史人*, 金藤悟, 今吉英介, 原亨子*, 山本眞也, 渡辺哲也, 栗田啓, 清水信義, 寺本滋 |
Abstract : |
肺切除患者の術後合併症を予測するため, 138例の肺癌切除症例に対して赤池情報量規準(Akaike Information Criterion=AIC)を用いて術後合併症に対する術前因子の関与度を検討した. 術後合併症の指標として, 術後発生した喘鳴, 去痰困難, 呼吸困難, 発熱, 不整脈などの心律動異常とした. 術前パラメーターとしては年齢, 性別, 肺切除範囲, Brinkman Index, 肺活量などの各種換気機能検査値, 残気率, 機能的残気量, DLCO, 更に術前換気機能検査値と肺切除範囲より計算した術後肺活量・1秒量・最大換気量の各予測値及び, 1秒量予測値を予測肺活量ないしは体表面積で割った値を用いた. 術前パラメーターのうち量的に計測されたものは2群に分割し, AICを用いて術後合併症を最も良く表現する至適境界値を見いだすとともに, それらの各術前パラメーターの関与度を数値的に比較した. その結果, 喘鳴と去痰困難には「術後1秒量予測値/予測肺活量<40%」などが高く関与していた. 呼吸困難には「肺切除区域数>7区域」が他のパラメーターより高い関与を示したが, 全体に関与度は低かった. 発熱には「Brinkman Index>500」, 不整脈などの律動異常には「肺切除区域数>7区域」のみが, かなり高い関与を示した. 70歳以上の高齢者群で同様の検討を行ったが, 術後合併症に対する各パラメーターの関与度は低く, 術前パラメーターからの予測の困難さが感じられた. 分割表を用いたAICは質的なデータも量的なデータも同一基準で評価することができ, その結果が数値で表現されるため, 術後合併症のように複数の因子の影響を受ける現象の解析に適した情報処理法と考えられる. |