Abstract : |
完全大血管転位症に対するSenning手術などでは, 心房内血流転換のために有茎右房フラップが用いられている. 本研究は, 動物実験によって, この有茎右房フラップの成長について検討することを目的とした. 実験動物の発育の影響も加味して検討するために, 雑種幼若犬を使用した. 実験には18頭の雑種幼若犬を用い, これを2群に分けて, A群:心房中隔欠損作成群とB群:有茎右房フラップ群とした. A群は更にこれを2分し, 心房中隔切離縁を放置した無処理群と, 切離縁をかがり縫いしたendothelialize群とした. B群では, 心房間溝を有茎とする右房フラップを用いて心房中隔置換実験を行った. それぞれ長期慢性犬を得た後に屠殺し心房中隔欠損部, 及び有茎右房フラップの変化につき検索した. またB群では, 術後定期的に屠殺を行い, 右房フラップの経時的変化の観察に供した. その結果, 以下のごとき結論を得た. 1. 実験的に作成した心房中隔欠損の面積は実験犬の発育とともに拡大した. しかし, 内膜を縫合した群では拡大は抑制されていた. 2. 本研究では, 有茎右房フラップは成長せず, 長期生存例で約60%に縮小した. 3. 有茎右房フラップの収縮機転は, 心筋組織の虚血性変化と縫合部の器質化によるものであり, この変化は術後4週で完成していた. 4. 有茎フラップの縮小度は, 文献上の比較では, 遊離心房パッチ, 自家心膜, 人工材質に比較して軽度であった. |