アブストラクト(34巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 冠血行再建術における心筋保護法-左冠動脈主幹部病変に対する逆行性冠灌流法の有用性に関する実験的研究-
Subtitle :
Authors : 桜田徹, 阿保七三郎
Authors(kana) :
Organization : 秋田大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 34
Number : 7
Page : 933-943
Year/Month : 1986 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 冠血行再建術における逆行性冠灌流法による心筋保護効果を評価することを目的として, 左冠動脈主幹部閉塞犬を対象にその保護効果を実験的に検討した. 成犬24頭を用い, 90分の大動脈遮断中に左冠動脈主幹部を絹糸にて完全閉塞し, I群=St. Thomas液による逆行性冠灌流(9頭), II群:同液による順行性冠灌流(9頭), III群:虚血のみ(6頭)の3群に分け, 経時的心筋温・心筋組織ガス分圧の測定, 心筋乳酸摂取率の計測, 左室心筋ATP含量の測定を行い, 心筋保護効果を比較検討した. 心筋温はI群で左室, 右室とも20℃以下にほぼ均等に冷却されたが, II群では右室温が灌流により急速に低下するものの, 左室温の低下は22℃までに制限された. 虚血90分間の心筋内Pco2の上昇率はI群で2.13倍と, II群5.43倍, III群6.41倍に比べ有意に小さく, 心筋内pHの低下も0.58でII群0.80, III群1.00と比べ有意に小さかった. また大動脈遮断解除後の乳酸産生もI群で有意に少なかった. ATPは虚血とともに低下し90分後にはI群が前値の58.5%, II群が55.8%となり, 体外循環後はI群が回復, II群はさらに低下を示したために両群間に有意差を認めた. 以上より, 逆行性冠灌流法は左冠動脈主幹部病変に対する心筋保護法として有用であり, 局所冷却の併用などによりさらに低い心筋温を維持することによって十分臨床応用可能な方法であると考えられた. また心筋組織Pco2, pHは即時に心筋代謝状態を把握し得る動的心筋保護効果判定の指標になり得るものと考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 冠血行再建術, 心筋保護, 左冠動脈主幹部病変, 逆行性冠灌流法, 心筋組織ガス分圧
このページの一番上へ