アブストラクト(34巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 横隔神経電気刺激法による開心術後の呼吸管理と血行動態への影響-実験及び臨床的検討-
Subtitle :
Authors : 石井潔*, 黒沢博身, 小柳仁, 中野清治, 榊原尚豪, 佐藤育男**, 野城真理***, 大沢幹夫****
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学日本心臓血圧研究所外科, *宮崎医科大学第2外科, **佐藤クリニック, ***東京医科歯科大学医用器材研究所, ****聖隷浜松病院心臓外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 34
Number : 7
Page : 948-957
Year/Month : 1986 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 経静脈性に両側性の横隔神経電気刺激呼吸法-electrophrenic respiration(EPR)-を用いて呼吸管理を行い, 血行動態における従来の陽圧呼吸管理との相違を実験的に検討し, また臨床例での検討を開心術後の症例で行った. 動物実験において, 両側性EPRをカテーテル電極を用いて施行したが, 経静脈性刺激による不整脈発生はカテーテルの先端とS-A nodeとの距離を30mm以上離せば問題のないことが判明した. 24時間の連続刺激による疲労現象に対する検討では, 実験動物の体温の保持などの良好な環境管理と酸素の投与で, 実験動物の十分な呼吸換気量の確保が可能であったことから, 短期間使用に関しては問題がないと思われた. 血行動態に及ぼす, 陽圧呼吸とEPRの影響の比較検討ではAOP, PAP, RAP, LAP, AO-FLOW, TPRにおいて, EPRではAOPの上昇, PAPの低下, RAPの低下, LAPの低下, AO-FLOWの増加, TPRの減少を認め, 血行動態における有意な改善を認めた. また右心負荷増大モデルとして6頭の成犬で三尖弁閉鎖不全(TR)を作製しEPRにより著しい血行動態の改善を確認した. 臨床例におけるEPR使用は, 開心術後の14例に行った. 全例で十分な呼吸管理と血液ガス所見を得ることができ, 2~6時間, 平均3.17時間のEPRで自発呼吸に移行できた. その間の一回換気量は7.2ml~12ml/kgで平均9.35ml/kgであった. カテーテル電極使用による不整脈発生は認めず, また連続刺激による疲労現象もみなかった. 血行動態への影響についての, 陽圧呼吸との比較検討では実験と同様にほとんどのパラメーターがEPRにより改善することを認めたが, AOPに関しては有意差を認めなかった. 臨床例を, 術前の右心負荷の状態で2群に分け(右室圧50mmHg以上と未満)で検討した結果, 右心系負荷群でより著明な効果を得た. 以上からEPRによる術後急性期の呼吸管理の可能なこと, カテーテル電極による不整脈発生の防止法を示した. また血行動態において, 陽圧呼吸管理に比較し良好な血行動態の得られることを確認した. 特に心臓手術後の呼吸管理では, EPRの使用により陽圧呼吸に比べ, 右心系後負荷としての肺動脈平均圧を低下させる. このことは術後血行動態の改善に肺動脈圧の低下が, 大きな影響を与えると思われる右房・肺動脈吻合術の術後呼吸管理などに良い適応となると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 横隔神経電気刺激法, 陰圧呼吸管理, 血行動態, 経静脈性刺激, 右心負荷
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