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肺癌手術でしばしば左房合併切除を余儀なくされることがある. しかしその適応や限界に関しては不明な点も多いため, 雑種成犬40頭を対象とし, 一側肺全剔術に加えて左房の合併切除を行い, その生体に及ぼす影響を左房の容積変化と循環動態の面から検討した. その結果, 1）左房を3段階に分けてクランプした場合, その残存容積はクランプ前を100%とすると, 心耳クランプ時70%, 中等度クランプ時47%, 最大クランプ時29%であった. 2）左肺全剔の後左房の最大切除を行い, 残存左房容積の変化を経時的にみると, 切除前対照群0.787±0.264ml/kg, 左房最大切除直後屠殺群0.232±0.071ml/kg, 4週後屠殺群0.254±0.070ml/kg, 12週後屠殺群0.286±0.102ml/kgであり, 術後わずかながら容積回復傾向があるものと思われた. 3）左房最大切除術の循環動態を切除前, 左一側肺全剔及び左房最大切除直後, 4週後, 12週後で比較すると, 肺動脈平均圧は切除前19.6±5.5, 左一側肺全剔及び左房最大切除直後25.0±7.0, 4週後26.1±4.3, 12週後26.6±7.4mmHg, と術直後から有意に上昇し, 以後低下しなかった. 左房平均圧はそれぞれ, 6.7±2.6mmHg, 9.4±2.8mmHg, 9.3±3.7mmHg, 8.0±4.1mmHgと変動し, 切除直後から有意な上昇をみたが以後漸減し, 12週後には切除前値と有意差のない値にまで低下した. また単位体重当たり平均心拍出量は0.096±0.037→0.080±0.024→0.111±0.043→0.112±0.046L/min・kgと変動し, 切除直後やや低下傾向を示したが, 4週以後は術前値を上回る傾向が認められた. 更に切除後12週の時点で, 10頭中3頭が肺動脈圧高値（30mmHg以上）を, また10頭中2頭が左房圧高値（12mmHg以上）を示した. 以上より, 左房切除術は術式として比較的安全な手技と思われたが, その臨床応用に当たっては, 循環動態上, 十二分な配慮が必要と思われた. |
