Abstract : |
開心術症例78例について臥位から坐位への体位変換に伴う肺局所基底インピーダンス(Zo)の変化をスポット電極によって調査した. 正常対照群20例では臥位から坐位へ体位変換によりZo値は上肺では平均2.27Ω増加し(p<0.005), 下肺では0.91Ω減少した(p<0.05). これは臥位から坐位への体位変換に伴う重力負荷により肺血流分布が上肺から下肺に偏位したことの反映と考えられた. ところが僧帽弁狭窄症を主とする後天性の逆行性肺高血圧症では, 重力の影響によって肺の血管周囲浮腫並びに血管床の器質的変化は下肺から進展し, 従って肺血流は次第に上肺に偏位し, 肺鬱血が重症になるほど臥位から坐位への体位変換によっても血流分布の移動は生じにくくなる. 開心術症例について術前の上肺Zo変化(坐位Zo-臥位Zo)と肺血行動態諸量との関係を調べたところ, 肺動脈楔入平均圧との間にr=-0.73(p<0.001)と最も良好な相関が得られ, 且つ肺血流シンチグラム上/下比との間にもr=0.53(p<0.001)の相関が得られ, 本法により心疾患症例の肺血流分布異常並びに肺動脈楔入平均圧がほぼ推定できることが判明した. また本法による弁膜症症例の術後長期追跡調査で上肺Zo変化が常に2.0Ω以下を呈する症例では手術もしくは術後経過に何らかの問題のある症例であり, 精査を必要とすることが示唆された. 本法は非侵襲的であり, 容易に頻回に反復測定できることから, 開心術の評価, 術後患者の外来での長期追跡調査, 心不全患者の管理などに有用な検査法である. |