アブストラクト(34巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 完全大血管転位症の心房内血流転換手術における有茎心房フラップの応用に関する実験的研究
Subtitle :
Authors : 東郷孝男, 佐藤成和, 浜田幸男, 加畑治, 田所正路, 堀内藤吾
Authors(kana) :
Organization : 東北大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 34
Number : 8
Page : 1134-1142
Year/Month : 1986 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 完全大血管転位症に対するSenning手術では, 心房内血流転換に使用される有茎心房フラップに成長が期待できることが, 大きな利点と考えられている. 本研究では長期生存可能なSenning手術類似実験モデルを作成し, 有茎心房フラップの成長の可能性を追求することを目的とした. 実験には雑種幼若犬25頭を用い, 実際のSenning手術と同様に有茎右房フラップと心房中隔フラップを用いて心房内血流転換を行い右肺静脈と上大静脈血を三尖弁へ, 左肺静脈と下大静脈血を僧帽弁へ誘導した. 長期慢性犬を得て, 血行動態の検索を行った後, 屠殺し病理学的検索を行った. また, 犬屍体心を用いた冠血管造影により, 心房壁の血管支配について検討した. 実験25頭のうち7頭に長期生存を得た. 右房フラップは著しい搬痕収縮を示したのに対して, 心房中隔フラップでは心筋組織は良く温存され, その面積は手術時の約80%であった. 冠血管造影では, 右房フラップの位置は右冠状動脈から分枝する右心房枝のみで支配されているのに対して, 心房中隔では左右の冠状動脈の細枝が交通枝を出してつながっており, 血液供給の障害は起き難いと思われた. 以上より, (1)Senning手術類似実験モデルにおいては, 有茎心房フラップに成長は認められなかった. (2)有茎心房フラップでは, 心筋組織の脱落と結合織化が著明であった. (3)有茎心房中隔フラップでは, 心筋組織は良く保存されていた. (4)以上の差はフラップへの血液供給の差によるものと思われた. との結論を得た.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 完全大血管転位症, Senning手術, 有茎心房フラップ
このページの一番上へ