アブストラクト(34巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : ラット摘出心による酸素加心筋保護液の検討
Subtitle :
Authors : 野元成郎, 石井淳一
Authors(kana) :
Organization : 昭和大学医学部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 34
Number : 9
Page : 1627-1637
Year/Month : 1986 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 開心術中, 心筋保護法の一手段として心筋代謝を抑制する目的で局所冷却を併用している施設は多い. しかし, 冷却, 心停止時の心筋に対して酸素供給が有効であるかという点についてはいまだ意見の統一を見ていない. 本実験ではSt. Thomas液と血漿の20倍の酸素溶解能をもつFluosolを用いて, ラット摘出灌流心による心機能の回復をみることで心筋保護液中の酸素の有用性について検討した. 実験群はSt. Thomasの酸素分圧を55±5mmHg, 190±10mmHg, 500±50mmHgの3段階に, Fluosol(PO2 700mmHg)のK+を5.5mEq/Lと18mEq/Lに変化させた. また心筋虚血時間は実験A15分(n=15), 実験B30分(n=10)とし, 虚血時の心筋温は4℃とした. 再灌流後の心機能のうち最も重要である大動脈流量の回復率はA・B両実験においてSt. Thomas液のPO2, 500±50mmHgとFluosolのK+を18mEq/Lとした群が他群よりも有意に良好であった(p<0.001)がSt. Thomas液PO2 55±5mmHgとFluosolのK+5.5mEq/Lとした群では不良であった. 心筋保護液注入から心停止を得るまでの時間はSt. Thomas液を使用した群では各群平均7秒であったが, Fluosolを使用した群では高K群で約30秒, 低K群では保護液として投与中拍動を続けていたものが75%に認められた. 以上より高濃度酸素の心筋保護液は有用であると考えられるが, 迅速な心停止を得ることが重要であり, Fluosolに心停止剤を付加すればより迅速な心停止が得られると考えられ, より優れた心筋保護液として使用できる可能性がある.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心筋保護, ラット摘出灌流心, Perfluorochemicals, St. Thomas液
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