アブストラクト(34巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 脳代謝からみた低体温法における許容循環遮断時間に関する実験的研究
Subtitle :
Authors : 井口篤志, 堀内藤吾
Authors(kana) :
Organization : 東北大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 34
Number : 9
Page : 1638-1647
Year/Month : 1986 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 脳代謝の面から低体温法における許容循環遮断時間を推定する目的で30頭の雑種犬を用いて実験を行った. エーテル深麻酔下に20℃まで表面冷却を行い, 30分遮断, 表面加温群(I群), 60分遮断, 表面加温群(II群), 60分遮断, 中心加温群(III群)の3群に分けた. 低体温過程における脳組織ガス分圧, 脳血流量を経時的に測定し, 脳酸素消費量を算出した. 冷却過程では脳血流量, 脳酸素消費量は減少し, 脳組織Pco2は低下, pHは上昇する傾向を示した. 循環を遮断すると脳組織Po2は速やかに減少し, Pco2の上昇, pHの下降がみられた. 遮断解除後, I群では脳組織Po2は著明に上昇したが, 脳酸素消費量は低値を示した. しかし加温とともに脳組織Po2は冷却前期に近づき, 脳酸素消費量は復温時には冷却前値の71%まで回復した. II群では遮断解除後の脳血流量は増加していたが, 脳組織Po2, 脳酸素消費量は低値であり, 復温時でも脳酸素消費量は冷却前脳の28%であった. III群では遮断解除後の脳酸素消費量, 脳組織Po2は低値であったが, 復温により脳組織Po2は上昇し, 脳酸素消費量は冷却前値の57%であった. 以上より20℃, 30分の循環遮断では脳組織は一時的に代謝の抑制を示すが, 復温により回復するものと思われた. これに対し60分遮断し表面加温を行うと遮断解除後の脳組織代謝は復出時にも抑制されていた. しかし同じ60分遮断でも中心加温を行うと復温時に回復傾向を示し, 体外循環使用により許容遮断時間は延長できるものと思われた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 表面冷却低体温法, 循環遮断, エーテル麻酔, 脳代謝
このページの一番上へ