Abstract : |
選択的順行性冠灌流症例21例, 並びに冠血行再建術症例100例の術前冠動脈造影において, 右冠動脈円錐枝の造影所見を検討した. 更に, 無作為抽出した剖検例210例における本枝の分岐様式, 及びその66例について本枝の動脈硬化所見を検索した. 前記121例中円錐枝の造影が良好であったもの72.2%, 不良16.5%. 欠如10.8%で, 後二者は右冠動脈洞より本枝が直接派生している(直接群)と考えられ, 結局, 造影上直接群と判定し得たのは44.6%であった. 一方, 剖検例では54.8%に直接群を認めた. 選択的順行性冠灌流症例で, 直接群と考えられた9例のうち, 大動脈弁置換を含む三弁置換術を行った1例は, 良く発達した円錐枝を有していた. 剖検例では, 直接群の3例に, 入口部の内径が約2mmで, 右室前壁の約2/3を支配する極めて良く発達した本枝を認めた. かような症例が, 選択的順行性冠灌流法の適応となる場合, 右心系の心筋保護に十分留意すべきである. 冠血行再建術症例で, 前下行枝あるいは右冠動脈基幹部が閉塞した21例に, 円錐枝による側副血行路を認めた. このうち5例は直接群症例と考えられ, いずれも円錐枝の造影は比較的良好であったが, その側副血行路については十分描出されているとはいえなかった. 円錐枝の動脈硬化所見は, 右冠動脈基幹部のそれに比し軽く, 本枝が側副血行路形成にあずかるのに有利であると考えられた. 以上より, 冠動脈造影の際, 選択的順行性冠灌流の適応症例, あるいは, 前下行枝又は右冠動脈基幹部閉塞症例では, 円錐枝特に直接群のものに対し, 十分な造影所見を得ることが重要と考える. |