Abstract : |
1981年6月から, 1984年7月まで, 当施設で経験した大動脈疾患に対するリング付きグラフト(= ringed graft, 以下RG. と略す)使用症例17例を臨床的見地より5群に分類した. 第I群:解離性大動脈瘤症例, 5例. 第II群:真性大動脈瘤症例, 1例. 第III群:大腿動脈送血部位からの逆行性大動脈解離症例, 2例. 第IV群:破裂大動脈瘤症例, 2例. 第V群=annuloaortic ectasia症例, 7例. annuloaortic ectasiaに対しては, 弁付きグラフトとRGとの合成グラフトを作製し, グラフト末梢端はリング部を大動脈外壁からテープで結紮固定した(Bentall手術変法). 男性13例, 女性4例, 年齢は25~66歳, 平均49歳であった. 手術成績は, 17例中, 手術死亡2例, 手術死亡率11.8%であった. RG挿入術は手術手技が簡便であり, 大動脈遮断時間が短く, グラフト吻合部出血が少なかった. 大動脈壁のリングによる固定部の破裂やリングの逸脱などは, これまでの中期遠隔(1年4ヵ月~4年5ヵ月)では認めていない. このように, われわれはRGの適応を拡大し, 急性解離性大動脈瘤はもとより, 亜急性及び慢性解離性大動脈瘤や, 真性大動脈瘤, annuloaortic ectasiaに対する待期手術のみならず, 破裂大動脈瘤(心嚢内, 肺内)や, 心臓手術中の逆行性解離高大動脈瘤に対する緊急且つ短時間で手技を完了することが望ましい手術にもRGを応用して好結果を得た. |