アブストラクト(34巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 高齢者大動脈瘤手術における術前状態と予後
Subtitle :
Authors : 遠藤正之*, 奥村福一郎, 北村豊, 古家仁, 高木治, 大住寿俊, 中島伸之**
Authors(kana) :
Organization : 国立循環器病センター麻酔科, **国立循環器病センタ血管外科, *市立稚内病院麻酔科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 34
Number : 10
Page : 1768-1775
Year/Month : 1986 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 国立循環器病センターにおいて, 1977年より1984年12月末までに施行された70歳以上の腹部大動脈瘤(AAA)74症例及び胸部大動脈瘤(TAA)24症例の術前状態と予後との関係について検討を加えた. AAAの死亡数は13例で, 死亡率は17.6%であった. また定期手術の死亡率は8.8%, 緊急手術の死亡率は47.1%であった. TAAの死亡数は11例で, 死亡率は45.8%であった. 定期手術の死亡率は28.6%, 緊急手術の死亡率は70%であった. 患者の術前状態を, アメリカ麻酔学会(ASA)の分類に従って判定し, 各クラスにおける死亡率をみると, AAAではクラスI. 0%, クラスII. 4.7%, クラスIII, 23.1%, クラスIV. 50%, クラスV. 100%であり, TAAでは各クラス順に, 0%, 37.5%, 38.6%, 66.7%, 100%であった. 一人の患者が所有している主な術前合併症の平均の数は, AAAでは生存群2.0, 死亡群3.9で両者に差を認めたが, TAAはそれぞれ2.5と3.0であり差はなかった. また各年齢における死亡率では, AAA, TAAともに差を認めなかった. 以上より, AAAでは術前状態が手術予後に大きく関与しており, ASA分類は高齢者においても予後を推測する良い指標となる. 一方TAAでは, 術前状態と手術予後とのあいだにAAAほど密接な関係はなく, これは高齢者にとってTAAの手術侵襲は極めて大きいため, 術前状態以上に手術侵襲が予後に強い影響を及ぼすためと考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 動脈瘤手術, 高齢者, 術前評価, 死亡率
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