Abstract : |
乳幼児の開心術症例13例(A群)と, 非開心術症例7例(B群)との術後早期の免疫動態を比較検討した. 術前及び術後第3病日と第7病日に採血し, 免疫グロブリン(IgG, IgA, IgM)濃度と補体(C3, C4, C3act)値を一元免疫拡散法で, リンパ球亜群をFITC標識モノクローナル抗体を用いた自動化されたレーザーフローサイトメトリーシステム(SPECTRUM-III, Ortho社)にて測定した. AB両群ともに免疫グロブリン濃度, 特にIgM濃度は第7病日に高値を示す傾向が認められ, 手術時の抗原刺激による抗体産生の増強と考えられた. 補体値はC3, C4, C3act値ともにB群では術後増加傾向が認められたが, A群ではほとんど変化が認められなかった. リンパ球数及びその亜群解析では, AB両群とも第3病日にリンパ球数の著減を認めたものの, A群ではその減少の主体はT細胞であり, B群ではB細胞が主体であった. また第3病日のT細胞/B細胞比はA群がB群に比べ有意に低値であった. またA群では第3滞日でhelper T細胞数がB群に比べ有意に少なく, A群でのT細胞減少の主体がhelper T細胞である可能性が示唆されたが, helper T細胞/suppressor T細胞比には変化が認められていないことより今後さらに検討を要すると考えられた. 以上より乳幼児における開心術後の免疫動態の特徴も成人におけると同様にT細胞の著減であるといえる. また成人に比較し正常に速やかに復するものの, 免疫系の発達は末熟であり, 術後早期には十分感染に注意を払う必要があると考えられた. |