Authors : |
水谷哲夫, 牧野茂行, 谷一浩, 鹿野和久, 宮村一男, 岡部学, 矢田公, 湯浅浩, 草川實 |
Abstract : |
心予備能の客観的判定法の1つとしてトレッドミルテストがあり, A-Cバイパス術症例を対象に, 本検査法よりみた血行再建術の効果と心筋viabilityの評価について検討した. 対象は44例で, 術前1ヵ月時, 術後3ヵ月時に4段階・各3分間のトレッドミルテストをなんらかの症状が出るまで行った. 44例中12例(A群)は術前の負荷で収縮期血圧が20mmHg以上低下し, その最大負荷時間は2.9±1.0分であったが, 術後には血圧の低下もみられず最大負荷時間は5.0±1.2分へと有意に(p<0.002)延長した. 術前の負荷で血圧の低下を来さなかった32例(B群)の最大負荷時間も, 術前4.9±1.9分より術後6.3±1.9分へ有意に(p<0.01)延長した. 術前は全例が陽性であったが, 術後はA群で12例中5例(42%), B群で32例中20例(63%)が陰性化し, B群の方の陰性化率が高かった. しかし術後に陽性を示した例でもΣST(虚血心筋領域)は術前よりも改善しており, A-Cバイパスによる虚血心筋の消失あるいは縮小効果は明らかであった. 以上より, 1)A-Cバイパス術により重症心筋障害は改善され, 心機能の向上や心予備能の増大が得られる. 2)トレッドミルテストにより虚血心筋の同定やそのviabilityの判定が可能であり, 手術適応や血行再建部位の決定に有用である. 3)本検査法はリアルタイムに血圧や心電図変化をチェックすることができ, 安全な負荷検査法である, などの結論を得た. |