アブストラクト(34巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 人工心肺下体外循環中の血中補体活性化に関する臨床的検討
Subtitle :
Authors : 宮本裕治, 川島康生
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 34
Number : 12
Page : 2055-2061
Year/Month : 1986 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 人工心肺下体外循環(cardiopulmonary bypass:CPB)を用いた開心術において血中補体が活性化される. 本研究では, この活性化のメカニズムを補体活性化経路の面より調べるとともに, 生体内での反応を肺におけるleukosequestrationと補体との関連より臨床的に検討した. 対象は成人開心術症例21例で, CPB中経時的に採血し, 補体及び白血球数の変動を調べた. また除細動直後とCPB離脱直後に肺動脈(PA)と左房(LA)より同時採血し, 両者の血液成分を比較した. CH50は, CPB開始後10分で前値の81±9%と有意(p<0.01)に低下したが, それ以後は有意な変化はなかった. C4, C2, C3, C5の溶血活性はCPB開始後10分でそれぞれ前値に比し有意(p<0.01)に低下し, C4;81±7%, C2;84±8%, C3;83±9%, C5;86±8%であったが, それ以後は有意な変化はなかった. C3a, C4a及び白血球数は有意に増加した. 除細動後で, 白血球数はPAで7,940±3,740/mm3に対しLAで5,310±3,650/mm3(p<0.001), C3aはPAで701±525ng/mlに対しLAで1,016±629ng/ml(p<0.05)と有意差がみられたが, C4aには差は見られなかった. CPB離脱後ではPAとLA間に上記の有意差は見られなかった. 以上の結果より, 1.CPBを用いた開心術中の補体活性化は, CPBによるものに加えて生体肺によっても生じており, 後者は主として肺循環再開後に生じた可能性が示唆された. 2.補体活性化に伴う生体内での反応として肺におけるleukosequestrationが示された. 3.CPBによる補体活性化はclassicalとalternativeの両経路を介するものであった. 4.生体肺での補体活性化はalternative pathwayを介するものであることが示唆された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 補体, 人工心肺, 補体活性化経路, 白血球, leukosequestration
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