Abstract : |
体外循環中, カテコールアミン(CA)は一般に上昇するといわれ, 最近, 大動脈遮断により高いピーク値を示すことが指摘された. 本研究では, 成人開心術30例を対象とし, 麻酔, 体外循環方式, 測定ポイントを可及的に一定して血漿エピネフリソ(E), ノルエピネフリソ(NE)を測定したが, 大動脈遮断解除時にE, NEとも著しく高いピーク値を示す山型のパターンが示された. 大動脈遮断中の血圧変動とE, 直腸温変動とNE, 更に大動脈遮断時間とNEとの間にそれぞれ相関々係が得られた. また, 遮断時間1時間前後(45分~75分)の症例の最低直腸温とEピーク値の間にも相関々係がみられた. 一方, NYHA I, II度の軽症群(12例)とIII, IV度の重症群(18例)に分けてプロットし直すと, Eピーク値は軽症群の方が重症群のそれより有意に高く, 反対にNEピーク値は重症群の方が軽症群より有意に高かった. 重症群では早期からEの枯渇傾向を示し, NEが代償性に増加したと考えられた. この術後の循環障害の原因となり得るEの枯渇現象を避けるため, 体外循環中のCA異常高値をへらす操作が望まれる. 体外循環中, 大動脈遮断時間を短く, 血圧変動を少なく, 直腸温を低くした方がCAの上昇を少なくできると思われた. また, 1時間前後の遮断を要する症例では, 最低直腸温を25~26℃まで下げるとE分泌を少なく抑えられると考えられた. |