Abstract : |
体外循環下開心術における術中, 術後の糖代謝とGIK投与の影響について検討した. 成人開心術症例33例を対象とし, これを体外循環中のカリウム補給液の組成に従って4群に分けた. すなわち, K群;KCl希釈液投与群, I群;GIK(ブドウ糖5g:インスリン1単位:カリウム4mEq)投与群, II群;GIK(ブドウ糖5g:インスリン2単位:カリウム4mEq)投与群, III群;GIK(ブドウ糖2g:インスリン1単位:カリウム4mEq)投与群の4群について, 血糖, 血清浸透圧, 尿量, 尿糖, immuno-reactive insulin, C-peptide immunoreactivity, 遊離脂肪酸, 血清カリウム, 尿中カリウムを測定し, 比較検討を行った. 体外循環中, GIK投与により血中インスリン値は次第に上昇し, I, II群では体外循環120分には, 各々464.8, 620.0μU/mlに達したが, 同時に血糖値は631, 659mg/dlと高値となり, 血清浸透圧も高値となった. III群の血糖値は体外循環中300mg/dl以下にとどまった. 体外循環中のGIK投与により, カリウムの細胞内移行促進効果がみられ, 更に遊離脂肪酸の遊出抑制効果と糖代謝のいち早い改善がうかがわれたが, 体外循環終了後に低血糖を来した症例はみられなかった. 体外循環中の糖代謝障害及び内因性インスリン分泌の障害には, 低体温の影響が大きいと考えられた. 体外循環下開心術における糖代謝管理に, 乳酸加リンゲル液を充填液とし, 体外循環中に2:1:4GIK液を投与する方法は有用であると思われた. |