Abstract : |
低形成肺動脈を伴う心疾患に対してEPTFE人工血管を用いて体肺動脈吻合(modified Blalock-Taussig shunt)を行う症例が多くなっている. 今回このEPTFE人工血管の抗血栓性の向上, 血漿漏出の原因究明, 管内血流量の測定法の確立についての実験研究を行った. 従来のEPTFEはporeの中にairがはいっている(dry type)が, これに対して溶媒処理を行ってporeのなかに蒸留水が入ったwet typeのEPTFEを作成した. この両タイプを同一実験犬の左右の大腿静脈にそれぞれinterposeして, 両者の抗血栓性を比較した. interposeの際の手術手技による影響を少なくするため, 人工血管と静脈とを縫合による吻合法は用いず, 人工血管を静脈の中に入れてその上からしぼる方法で吻合した. 長さ4cmにわたり, 直径4mmの人工血管を用いて実験を行ったところ, 従来のdry typeは30分以内に閉塞したのに対し, wet typeは実験時間以内には閉塞せず抗血栓性が向上しているのが観察された. 次に, 血漿漏出については, 蒸留水や生理的食塩水などで人工血管内に圧をかけてフラッシュするとporeが広がって血漿漏出が起こるのが認められた. このことより, 術後の合併症を避けるため, 血漿漏出を起こさないように圧力をかけないようにすべきである. EPTFE人工血管内の血流量計測は, 血漿漏出をおこしている状態で電磁流量計を用いて計測する方法ではS/N比が低く測定できなかったが, wet typeでは正確な血流波形が得られた. |