アブストラクト(35巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 完全大血管転位I型の解剖学的根治術 ―左室準備手術としてのBlalock-Taussig手術の意義に関する考察を中心として―
Subtitle : 原著
Authors : 青嶋實, 横田通夫, 曲人伸, 北野満, 嶋田一朗, 水原寿夫, 中野博行*, 上田憲*, 斎藤彰博*, 村岡隆介**
Authors(kana) :
Organization : 静岡県立こども病院心臓血管外科, *静岡県立こども病院循環器科, **福井医科大学第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 35
Number : 1
Page : 82-88
Year/Month : 1987 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 生後11日から8ヵ月, 中央値35日齢のI型TGA 8例に対し, 1)BAS後の低酸素症改善のため, 又はPGE1有効例ではその低酸素症改善効果維持のために, 2)更に将来のJatene手術に備えての左室準備効果の可能性を検索するために, 径4mm Goretex管を用いたmodified Blalock-Taussig(BT)手術を行った. 低酸素症に関しては全例術前に比し安定した改善効果を示した(p<0.01)が, 心房間交通孔の小さい3例に, 著明な呼吸不全症状と肺うっ血を伴う心不全を発症し, 術後管理に難渋した. 呼吸不全発症例はすべてLV/RV圧比0.80以上と良好な左室圧条件を示したが, 呼吸不全非発症例ではLV/RV圧比0.60以下を示す例が3例あり, BT術後左室圧のばらつきは大であった. 左室壁厚値では全例BT術後明らかな減衰傾向を示す例はなかった(end-systole平均値:5.7mm). 壁厚に減衰傾向のない, 圧比0.5以上の, BT術後例5例を含む7例に, ほぼ同一組成のcold blood心筋保護条件下にJatene手術を敢行し, 圧比0.6以下の2例を失った. BT術を行わずその代用としての長期PGE1投与後の一期的Jatene手術例と, 上記BT術後圧比0.75以上の症例の, 計5例は全例結果的には救命し得たが, BT術後重篤な呼吸不全が発症する危険性があることと, 左室圧が低値にとどまる症例もあることから, TGA I型例でのBT術は常に安全な左室準備手技とはなりえず, また, 左室圧に対する効果も信頼性に欠くものと考えられた. 更に死亡例の検討から, LV/RV圧比0.60以下の症例は, 左室壁厚に減衰傾向がなくても, 大動脈遮断2時間以上のJatene手術は危険と考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 完全大血管転位I型, 解剖学的根治術, Blalock-Taussig手術, 左室壁厚, 左室右室圧比
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