Abstract : |
2例の小児胸腺腫に対して手術を施行した. 第1例(13歳, 男)は超手拳大の腫瘍が前縦隔に浸潤性に存在しており, 左肺剔除, 心膜部分切除を加えて摘出したが, 胸腔内播種もあり, これらできる限り焼灼した. 術後補助療法は行わなかったが, 術後2年8月健在である. 病理組織学的にはリンパ球型胸腺腫であった. 第2例(13歳, 男)では正常胸腺を残して鶏卵大の被包型腫瘍を摘出した. 組織学的には混合型胸腺腫であった. 本症例は術後6月の現在健在である. 小児期の胸腺腫はまれであるが, 自験例のように緩徐な経過をたどるものや被包型もあるのであり, 治療に際しては成人におけると同様な方針をとるべきであると考える. 全縦隔腫瘍の中で胸腺腫は, 奇形腫や神経原性腫瘍と並んで頻度が高く, 且つ奇形腫とともに前縦隔腫瘍の多くを占めるものである. 胸腺腫は40歳以上の年齢層に発生することが多く, 悪性腫瘍としての性格を有するものや, 自己免疫疾患の範疇に入る種々の全身合併症を惹起するものがある. 胸腺腫が20歳以下の低年齢層あるいは小児に発生することはまれであるため, その時期に発生した胸腺腫に対する病態や治療法に関してまとまった報告は極めて少ない1). |