Abstract : |
ファロー四徴症, 大血管転位症, 大動脈縮窄症などでは, 組織補填材料として自家心膜, テフロン, EPTFEなどの素材が用いられているが, 乳幼児期では成長に伴う変化が問題となる. 本研究は, 雑種幼若犬37頭を用いて, 全く成長の可能性のない自家心膜(n=10)やグルタールアルデハイド処理心膜(n=12)と比較しつつ, 成長の可能性のある無処理の他家静脈片(n=15)を用いて行った. 移植部位は右房・右室・肺動脈・大動脈で, 4ヵ月~17ヵ月にわたり発育させ, 遠隔期における変化を血行動態及び病理組織学的に検索した. その結果, 他家静脈片をパッチとして結節縫合により縫着した場合, 特に右房, 右室では筋層の残存と, 栄養血管の新生を認め, 成長する可能性が示唆された. 肺動脈, 大動脈では, 右房, 右室に比較して弾性線維化が強く, 残存筋層面積は少なかった. 静脈片自体は自家心膜やGA処理心膜と比較して, 退縮変形は少なく, 狭窄も認めなかった. 以上の実験結果より, 自家心膜やGA処理心膜と異なり, 他家静脈片は乳幼児期に結節縫合にて縫着した場合, パッチ自体の成長の可能性があり, 免疫学的に適合すれば, 臨床的にも両親などから容易に採取でき, 有用な補填材料であると考えられる. |