アブストラクト(35巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 腎機能低下症例に対する体外循環 ―術中血液透析と拍動流ポンプ使用の有効性の評価―
Subtitle : 原著
Authors : 須藤憲一, 小塚裕, 和気一夫, 川内基裕, 斉藤寛文, 田中公啓, 関口昭彦, 田中修, 浅野献一
Authors(kana) :
Organization : 東京大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 35
Number : 2
Page : 183-191
Year/Month : 1987 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 術前より存在する腎機能低下症例に対し, われわれは, (1)体外循環中血液透析(以下HD)の併用, (2)拍動流(以下PAD)の使用, (3)体外循環の高流量の維持を行っているが, (1), (2)に関し臨床的に検討を行った. 1981年4月1日より1985年3月31日までに施行した人工心肺使用症例は876例であったが, 成人開心術症例で体外循環時間が90分を越え, 且つ術後1週間以上生存したのは316例であった. このうち術前1週間以内の血清クレアチニン値が1.5mg/dl以上の症例19例を検討の対象とした. 対象群を体外循環中に血液透析, 及び拍動流法の両者を併用したもの(H群・4例), 拍動流法のみを併用したもの(P群:5例), 対照群として定常流体外循環を行ったもの(N群:10例)の3群に分けた. H群の体外循環前血中尿素窒素値(以下BUN), 血清クレアチニン値(以下S-CRN), 血中カリウム値(以下K+)はそれぞれ平均53.0mg/dl, 2.5mg/dl, 4.8mEq/Lであったが, 体外循環終了時はそれぞれ24.5, 1.6, 3.8と低下した. この値は術後漸増の傾向を示したが, 4例中3例において術後急性期にはHDを施行するまでには到らず, 本方法により腎不全症例に対する手術時の血液浄化が有効であることが確認された. なお, 術前のクレアチニンクリアランス値(以下CCRN)は平均19.5ml/分/M2であった. 腎機能低下症例に対するPADの効果を検討する目的でP群とN群との術前・術後のBUN, S-CRNの比較を行った. 術前, 術後1日目(以下1POD), 3日目(3POD), 5日目(5POD), 1週間(7POD)のBUNはP群では36.6±5.0(M±SE), 30.8±2.0, 33.4±4.2, 38.4±5.3, 41.2±5.4mg/dlであり, N群では25.4±1.9, 24.8±4.7, 25.8±3.3, 36.1±8.4, 40.6±8.7mg/dl, S-CRNはP群では1.8±0.1, 2.2±0.3, 2.2±0.4, 1.9±0.3, 1.6±0.1mg/dl, N群では1.6±0.1, 1.9±0.2, 1.7±0.1, 2.4±0.6, 2.6±0.8mg/dlであった. 2群間で多重比較検定を行ったが有意差は認められなく, PADの有効性は認められなかった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 腎機能低下, 血液透析, 拍動流体外循環
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