Abstract : |
患者は60歳の女性で, 主訴は咳嗽及び発熱である. 特徴的臨床所見として, 胸部X線上, 右上葉の腫瘤陰影が約1ヵ月の間に変化し, 空洞形成及び著明な縮少を示した. またGaシンチにて異常集積像を認めた. 気管支鏡下生検にて肺大細胞癌が疑われ, 右上葉切除及びリンパ節郭清術を施行した. 切除標本の割面では, 病巣は境界不明瞭な腫瘤状であり壊死と空洞を形成していた. 組織所見は, 肉芽腫の形成と血管周囲の著明な細胞浸潤を特徴とした. 細胞浸潤は, 主として形質細胞及び幼若リンパ芽球であり, また異型性の強いリンパ系細胞の散在を認めた. 以上の所見より, 肺のリンパ増殖性疾患の1つであるリンパ悪様肉芽腫症(Lymphomatoid granulomatosis:LYG)と診断した. 術後8ヵ月の現在, 再発を認めないが, 本疾患の予後は不良であり, 今後も厳重な経過観察が必要と思われる. 肺のリンパ腫様肉芽腫症(Lymphomatoid granulomatosis:以下LYG)は, 腎病変を伴わない以外は臨床的にWegener肉芽腫に類似している. 北米からの報告例が多いが, 本邦では極めてまれで2・3の文献的報告1)~3)があるにすぎない. 今回, 筆者らは肺切除後の組織学的検索にてLYGと診断した症例を経験したので文献的考察を加えて報告する. |